動詞に前置詞や副詞が組み合わさり、元の動詞とは別の意味になったものを句動詞(phrasal verb)といいます。 句動詞は群動詞や動詞句ともいわれますが、句動詞は
①自動詞+前置詞
②自動詞+副詞
③自動詞+副詞+前置詞
③他動詞+副詞
の4パターンがあります。
句動詞とは何か?
getやcarryのような基本的な動詞にoverやoutなどの前置詞や副詞が組み合わさり、元の動詞とは別の意味になったものを句動詞(phrasal verb)といいます。例えば、句動詞のget over (~を克服する)やcarry out (~を実行する)は単体のgetとcarryの意味と全く異なります。しかし、listen to (~を聞く)やwalk away (立ち去る)は元の動詞から意味が推測できるので句動詞として扱われません。この推測できる度合いは絶対的なものではないので、人のよって判断が異なる場合も生じます。また、英語学習書の多くは後者も句動詞に含めて英文法の説明をしています。別の意味になろうがなかろうが「動詞+前置詞or副詞」の用法は変わらないためです。本記事でも元の動詞から意味を推測できる「動詞+前置詞or副詞」を含めて話を進めます。
句動詞は群動詞や動詞句ともいわれますが、句動詞は
①自動詞+前置詞
②自動詞+副詞
③自動詞+副詞+前置詞
③他動詞+副詞
の4パターンがあります。take care of (~の世話をする)やmake use of (~を利用する)などの「動詞+名詞+前置詞」のパターンも句動詞に含める参考書がありますが、名詞が含まれるので、英文法的には句動詞に分類されません。
句動詞でとくに重要となるのが
①動詞が自動詞と他動詞のどちらか?
②動詞につく単語が前置詞と副詞のどちらか?
の2点です。この違いにより語法が変わるためです。
後ろに目的語をとらない動詞が自動詞(intransitive verb)、目的語をとる動詞が他動詞(transitive verb)です。前置詞は名詞・代名詞・動名詞などの名詞の働きをする語句の前に置いて形容詞句や副詞句を作る語、副詞は動詞・形容詞・他の副詞や文全体を修飾する語です。自動詞は後に前置詞を置くことで他動詞の働きをし、後ろに目的語を置くことができます(「①自動詞+前置詞」の形)。例えば、自動詞のgoの直後に目的語がくることはありませんが、句動詞のgo over (~を調べる)の後には目的語がきます。
I go to school every day.
毎日学校に通っています。
My professor told me to go over the paper again.
教授は私にもう一度論文に目を通すように言った。
[注] go to (~に行く)はgo (行く)から簡単に意味を推測できるので句動詞ではありません。
他動詞は単独であとに目的語をとるので、他動詞の直後に前置詞がくることはありません。
My professor told me to read the paper again.
教授は私にもう一度論文を読むように言った。
つまり、「動詞+前置詞」の形をとる動詞はすべて自動詞です。
「副詞」は自動詞と他動詞どちらにもつきます。「自動詞+副詞」はそのまま自動詞の役割を果たして目的語がつかず、「他動詞+副詞」はそのまま他動詞の役割を果たして目的語がつきます。「自動詞+副詞+前置詞」は前置詞がつくことで他動詞化してあとに目的語がつきます。句動詞にはわかりやすい句動詞とわかりにくい句動詞がありますが、わかりやすい句動詞は、①動詞が自動詞もしくは他動詞のいずれかの用法しかない、②動詞につく単語が前置詞もしくは副詞のいずれかの用法しかない、場合です。逆にわかりにくい句動詞は、①動詞が自動詞と他動詞の2つの用法がある、②動詞につく単語が前置詞と副詞のどちらでも使われる、場合です。
以下、この点に留意して、句動詞の4つのパターンを詳しく見てみましょう。
自動詞+副詞
自動詞は第1文型と第2文型の形をとり、第2文型では主語と動詞の後に補語が続きますが(S+V+C)、第1文型では主語と動詞だけが文の主要素となります(S+V)。
ゆっこがみおに「今から英語言ったら負けね。」というセリフが英語版では、
The first one to use an English word loses.
と訳されています。主語がThe first one to use an English、動詞がlosesの第1文型の文です。句動詞「自動詞+副詞」はこれに修飾語句の副詞が付け加えられた形です。つまり、副詞は修飾語句であり、副詞が特定の動詞を結びつくことで新たな意味を生み出します。
桜井先生が弟の部屋に勝手に入ろうとして弟にキレられています。「ノックぐらいはしてくれよー!」
At least knock before you come in!
at least=少なくとも; come in=中に入る
come inが「自動詞+副詞」です。第1文型(S+V)なのでcome inの後に補語や目的語がくることはありません。もう一つ、「自動詞+副詞」の例文を見てみます。
2001年にテレビ東京で放映された英語版『ジャングルはいつもハレのちグゥ』のハレのセリフです。「結局こうか…。」が
So it ends up like this after all…
end up=終わる、終わりを迎える; like this=このように; after all=結局
と英訳されています。「自動詞+副詞」のend upは動詞のendとほぼ同義ですが、upをつけることで「終わり」のニュアンスが強められた感じになります。
このように「自動詞+副詞」の副詞は必ず動詞の直後にきます。動詞と副詞の間に別の修飾語句が入ることもありません。この形をとる句動詞は多数ありますが、ここではその代表的なものだけ取り上げます。
break down 故障する
break out 起こる
come about 起こる
get along うまくやっていく
get off (乗物から)降りる
give in 屈服する
go on 続く
go out 出かける
grow up 成長する
hurry up 急ぐ
look out 気をつける
pass away 亡くなる、死ぬ
run away 逃げる
set out 出発する
show up 現れる
stand out 目立つ
take off 離陸する
turn up 姿を現す
自動詞+前置詞
「自動詞+前置詞」は自動詞の直後に前置詞がつくことで、自動詞が他動詞化し、前置詞の後に目的語をとります。第3文型(S+V+O)の形をとるのでこの句動詞は準他動詞とも呼ばれます。
2006年にテレビ放映された『N・H・Kにようこそ!』での、主人公の佐藤の「山崎に謝んなきゃなあ。」というセリフが
I’d better apologize to Yamazaki.
I’d better=I had better; apologize to=~に謝る
と英訳されています。自動詞apologizeに前置詞toがつくことで他動詞化し、その後に目的語が続いています。
「頼んだぞ、山崎。」は
I’m counting on you, Yamazaki.
と英訳されています。「頼る、当てにする」という意味の自動詞countは単独で使われることはほとんどなく、このようにcount onの形で「~に頼る、~を当てにする」という意味で用いられます。ここでは現在形ではなく現在進行形にすることで、いつもではなく今現在、何かを山崎に頼っているという意味合いにしています。
このように「自動詞+前置詞」の後に必ず目的語が続きます。この形をとる句動詞は多数ありますが、ここではその代表的なものだけ取り上げます。
account for ~を説明する
ask for ~を求める
belong to ~に属する
break into ~に侵入する
call for ~を求める
come across ~に偶然出会う
consist of ~から成る
deal with ~を扱う
depend on ~に依存する
get over ~を乗り越える
hear from ~から便りがある
hear of ~のうわさを聞く
laugh at ~を笑う
look for ~を探す
participate in ~に参加する
rely on ~に依存する
suffer from ~に苦しむ
take after ~に似ている
think of ~のことを考える
自動詞+副詞+前置詞
自動詞に副詞と前置詞がつく句動詞があります。これも「自動詞+前置詞」と同じく他動詞化し、前置詞の後に目的語がつきます。
I don’t know how she puts up with him.
2人はアメリカの超人気アニメ『The Simpsons』のシンプソン家一家の母親であるMargeの双子の姉のPattyとSelmaです。put up withは「~を我慢する」という意味の句動詞です。sheはMarge、himはMargeの夫のHomerのことで、「マージはどうやってあいつに我慢しているのだろう?」と訳せます。
同じくThe SimpsonsのKrusty The Clown(右)とSideshow Mel(左)。Krusty The Clownが「妹(姉かもしれません)に近づくなと言ったはずだ!」と怒っています。stay awayだけだと「自動詞+副詞」で「離れたところにいる」という意味になりますが、これに前置詞がついてstay away fromだと「~から離れたところにいる」。この句動詞は命令形で使われることが多く、その場合は「離れたところにいろ!」➡「近づくな!」という意味になります。
「自動詞+副詞+前置詞」の句動詞は穴埋め問題によく出るので、英文を読んでいて「自動詞+副詞+前置詞」の句動詞を見かけたらコツコツしっかり覚えていきましょう。ここではその一部を紹介します。
catch up with ~に追いつく
come up with ~を思いつく
do away with ~を廃止する
face up to ~を直視する
get along with ~とうまくやっていく
give in to ~に屈する
keep up with ~に遅れないようについて行く
live up to (期待・責任)に応える
look down on ~を見下す
look forward to ~を楽しみに待つ
look up to ~を尊敬する
make up for ~の埋め合わせをする
put up with ~を我慢する
run out of ~を使い果たす
speak ill of ~の悪口を言う
think highly of ~を尊重する
「自動詞+副詞+前置詞」の後には名詞・代名詞・その他の名詞相当語句がきます。前置詞がtoのときにto不定詞と勘違いしてtoの後に動詞の原形を続けないように気をつけてください。動詞がくる場合は名詞相当語句である動名詞が続きます。
[動名詞] I’m looking forward to hearing from you.
ご連絡お待ちしております。
[不定詞は間違い] I’m looking forward to hear from you.
他動詞+副詞
他動詞は後に目的語を続けて第3文型(SVO)、第4文型(SVOO)、第5文型(SVOC)の形をとりますが、句動詞「他動詞+副詞」は第3文型で修飾語の副詞が付け加えられた形です。
Did you bring in the laundry for me?
「洗濯物入れておいてくれましたかあ?」
『日常』での東雲なののセリフですが、雨が降ったので洗濯物を外から家の中に入れたかを尋ねてbring inという表現を使っています。bringは他動詞なので目的語のthe laundryが後に続いています。注意すべきことはここで他動詞なのはbring inではなくてbringであり、inは前置詞ではなくて副詞であるということです。副詞のinは修飾語句にすぎないので、inを外して
Did you bring the laundry for me?
と言っても文は成立します。また、「自動詞+前置詞」の場合は目的語は必ず前置詞の後にきますが、ここでのinは副詞なので目的語をinの後ではなく前にもっていくこともできます。
Did you bring the laundry in for me?
ただし目的語が代名詞の時は必ず目的語を前置詞の前に置く必要があります。
〇 Did you bring it in for me?
× Did you bring in it for me?
句動詞で一番わかりにくいのはこの点です。
※「他動詞+副詞」での目的語の位置
目的語が
①代名詞➡動詞と副詞の間
②代名詞以外➡副詞の前と後のどちらでも良い
ただし、
③目的語が長い➡副詞の後
目的語が長い場合は動詞と副詞の間に挟まない方がよいのは、副詞が動詞から離れると句動詞であることがわからなくなるからです。
「自動詞+前置詞」は「他動詞+副詞」と同じように目的語をとるので2つを混合しないように気をつける必要があります。多くの動詞が自動詞・他動詞どちらにもなり、前置詞の多くがinやonのように副詞としても使われるので、句動詞を一見しただけではどちらかわかりにくいです。前置詞のat, beside, for, from, into, of, toward, withは副詞にならないので動詞の後にこれらの単語が出たら、この形は「他動詞+副詞」ではなく、「自動詞+前置詞」ということがすぐ判断できます。しかし、away, back, out, upのように前置詞でも副詞でも使われる単語が動詞の後に出てきた場合、これが「自動詞+前置詞」なのか、それとも「他動詞+副詞」なのかわかりにくいことがあります(注: 「自動詞+副詞」の場合は目的語がないことで簡単に判断できます)。動詞が自動詞と他動詞のいずれかにしか使われないのであればどちらか判断できますが、動詞の多くは自動詞と他動詞のどちらにも使われるので、動詞を見て判断するのは難しいです。結局、「自動詞+前置詞」と「他動詞+副詞」を区別する一番手っ取り早い方法は、句動詞は例文を通して覚え、「自動詞+前置詞」の時に目的語を間に挟んだら違和感を感じるようになるまで感覚的に習得することです。
I’d better apologize to Yamazaki.
I’m counting on you, Yamazaki.
を
I’d better apologize Yamazaki to.
I’m counting you on, Yamazaki.
と言ったら、語感がおかしいでしょう。おかしいと感じなければ、おかしいと感じるまで例文朗読を繰り返しましょう。
以下、「他動詞+副詞」の例文をいくつか見てみます。
fill A outは「(書式・文書などに)A(所要の書き込み)をする」という意味の句動詞です。
I can’t fill this out for you.
あなたのためにこれを記入することはできません。
I’ve even filled out the application form already.
「入部希望の紙も書いたし」
前者は目的語が指示代名詞のthisなので、目的語が動詞と副詞の間に置かれています。後者は
I’ve even filled the application form out already.
と言ってもかまいませんが、目的語が3語から成り少し長いので副詞の後に置いた方がすっきりします。
put A onは「(衣服など)を身に着ける、着る」という意味の句動詞です。
Don’t you want to put some clothes on?
服を着たくないの?
Here. Let me show you how to put on a tie.
ほら。ネクタイの締め方を教えよう。
どちらの例文も目的語を副詞の前と後のどちらにでも置けます。
Don’t you want to put on some clothes?
Here. Let me show you how to put a tie on.
I can’t watch this anymore. Hurry up and take this off.
「見ちゃおれん。ほれ、早く脱げ。」
Would you please take off my key already?
「もう、いい加減このねじ外れないんですか?」
最初の例文では目的語のthisが代名詞なので目的語を副詞の後に置けません。後の例文は目的語を副詞の前に置いてかまいません。
Would you please take my key off already?
He threw his life away for you!
あいつはお前のために命を捨てた!
Patty, are you throwing away your last chance at happiness just for me?
パティ、私のために幸せの最後のチャンスを捨てるのかい?
前の文は目的語を副詞の後に置けますが、後の文はyour last chance at happinessをthrowとawayの間に挟むと意味をとりにくくなるので副詞の前には置けません。
He threw away his life for you!Patty, are you throwing your last chance at happiness away just for me?
「他動詞+副詞」の句動詞は穴埋め問題によく出るので、英文を読んでいてこのタイプの句動詞を見かけたらコツコツしっかり覚えていきましょう。ここではその一部を紹介します。「他動詞+副詞」の句動詞を覚えるコツは、目的語を加えて「他動詞+A+副詞」の形にすることです。
bring A about ~を引き起こす
call A off ~を中止する
carry A on ~をし続ける
carry A out ~を実行する
figure A out ~を理解する
give A up ~をあきらめる
hand A in ~を提出する
pick A out ~を選び出す
put A out ~を消す
see A off ~を見送る
try A on ~を試しに着てみる
turn A down ~を拒絶する
turn A on 栓をひねって(水・ガス)を出す
turn A off 栓をひねって(水・ガス)を止める
さらにややこしいのは、「自動詞+副詞」と「他動詞+副詞」双方の形で使われる句動詞があることです。例文を通して一つずつ覚えていくしかありません。以下、代表的な意味を載せますが、いずれも多義語なのでほかの意味でも使われることを頭に入れておいてください。
break down 故障する/ ~を取り壊す
hold up 持ちこたえる/ ~を掲げる
look out 外を見る/ ~を探し出す
look up 見上げる/ (辞書などで)~を調べる
make out うまくやっていく/ ~を理解する
pull back 引き返す、前言を取り消す/ ~を引っ込める
set off 出発する/ (花火・ロケット)を打ち上げる
sit up 寝ずに起きている/ ~を起き上がらせる
take off (飛行機が)離陸する/ ~を脱ぐ
take over 引き継ぐ/ ~を引き継ぐ
他動詞+前置詞
句動詞の受動態について
以下、句動詞のある文を受動態にする際の注意点を簡潔に述べます。能動態の「AがBを~する」をその動作を受けるBの側に立って、「BはAに~される」という言い方にすることを受動態と言います。自動詞としてはたらく「自動詞+副詞」の文はこのBにあたる目的語がないので受動態にできません。
「自動詞+前置詞」、「自動詞+副詞+前置詞」、「他動詞+副詞」の句動詞は、他動詞としてはたらいて目的語をとるので、受動態にできます。句動詞は動詞と副詞/前置詞がセットになって意味を成すので受動態の文にしたとき、2つを切り離してはいけません。以下、受動態の例文をいくつか見てみます。
She put off the marriage simply because of his money trouble.
彼のお金の問題で彼女は結婚を延期した。
➡The marriage was put off by her because of his money trouble.
They spoke well of Hitomi at the funeral.
彼らは葬式でひとみをほめた。
➡Hitomi was spoken well of by them at the funeral.
この2つの例文はどちらも能動態を受動態に変えることが「文法的」には可能というだけであって、能動態を受動態に変えるべき必要性は特にありません。英語はシンプルな文章を好むので必要がない限り、能動態で書くようにしましょう。しかし、最初の例文では誰が結婚を延期したのかあいまいにしたい時は受動態にするとよいです。受動態では主語を省略できるからです。その場合はby herを省略します。
The marriage was put off because of his money trouble.
彼のお金の問題で結婚は延期された。
2番目の例文も誰がほめたかをあいまいにしたいときは受動態にしてかまいません。
Hitomi was spoken well of at the funeral.
ひとみは葬式でほめられた。
Missions are carried out in squads.
「任務は班で行う。」
missionは「任務、使命」、squadは「同じ仕事をする班、小グループ、分隊(a small group of people trained to work together)」、carry A outは「Aを実行する」という意味です。カカシのセリフですが、日本語では能動態のセリフが英語版では受動態になっているのが興味深いです。日本語セリフを英語式にすると、「お前らは任務を班で行う」べきであるところ(You carry out missions in squads.)を、主語を省略するために受動態にしたと思われます。
※追伸
※本記事は下記の記事の全面的な書き直しです。前の記事を削除するのももったいないのでここにキープしておきます。
前置詞は名詞や名詞相当語句(名詞ではないが文中で名詞の働きをする語句)と結びついて、形容詞句や副詞句を作ります。そのため、前置詞の後には名詞・代名詞・名詞句・名詞節が続きます。大学受験対策で覚えさせられるイディオムの多くは「動詞+前置詞」の形を取ります。consist of (~からなる) やparticipate in (~に参加する)といった熟語です。Water consists of two elements. (水は2つの元素から成り立っている)、I participated in the festival. (私は祭りに参加した)のように前置詞の後には名詞・名詞相当語句が続きます。しかし、動詞と前置詞らしき単語の組み合わせなのに、その後に名詞が続かなかったり、名詞が前置詞の後ではなく動詞と前置詞の間にくるイディオムを見かけることがあります。例えば、「振り返る」はturn aroundで完結して、aroundの後に名詞が続きません。また、「それを返す」はgive it backと言い、give back itと言うことは決してありません。
これはどういうことなのでしょうか? もう一度繰り返します。①前置詞の後には名詞もしくは名詞相当語句が来るはずなのに、②前置詞らしきものの後に名詞・名詞相当語句が続かなかったり、③名詞・名詞相当語句が前置詞らしきものの後にではなく前に置かれることがあるのはなぜなのでしょうか?
正解は②と③の「前置詞らしきもの」は実は前置詞ではなく副詞だからです。副詞は動詞・形容詞・副詞・文全体を修飾する語です。だから副詞には名詞や代名詞はひっつきません。前置詞の多くは副詞としても使われます。例えば、about/across/around/by/down/in/on/off/out/over/upなどです。これらの単語が前置詞で使われているか、それとも副詞で使われているか、どちらなのか意識して気をつける必要があります。前置詞と副詞では文法的機能が全く違うためです。
①「動詞+前置詞」の後に名詞類がくる形
②「動詞+副詞」の後に名詞類がこない形
③「動詞」と「副詞」の間に名詞類がくる形
この3つの区別がしっかりできるようになってください。⓪動詞が「他動詞」の時は「動詞」の後に名詞類がきます。①は動詞が目的語を取らない「自動詞」なので次に名詞・名詞相当語句ではなく前置詞がつく形になっています。②の動詞は「自動詞」です。自動詞にも副詞にも名詞類はひっつかないので「動詞+副詞」で完結します。③の動詞は「他動詞」です。だから動詞の後に名詞類が登場してきます。名詞類の位置は基本的に副詞の前でも後でもかまいませんが、その名詞類が代名詞の時は「動詞+代名詞+副詞」の順序になります。動詞イディオムは、これら3つのパターンの違いに注意して、動詞にくっつく単語が前置詞と副詞のどちらか理解した上で覚えていってください。特に一番気をつけるべきルールは、「他動詞+副詞」では目的語が代名詞の時は「他動詞+副詞+代名詞」ではなく「他動詞+代名詞+副詞」の形をとることです。