刀弥雅彦/霜康司著 『システム英単語』 駿台文庫
わたしが高校生の頃、もっとも有名な英単語集は『試験に出る英単語』、略称『出る単』でしたが、例文も載っていない無味乾燥なこの本を使って機械的に英単語を覚えられる人は、天才かバカのどちらかにちがいないと、当時思っていました。いま、1番人気のある英単語集は駿台文庫から出ている『システム英単語』だそうです。アマゾンのブックレビューを見る限り、かなり評判が良いようですが、いつの時代でも、高校生・大学受験生は教材の善し悪しを正しく判断できないようです。
言語学的にも脳科学的にも、こういう英単語集を使ってボキャブラリーを増やそうとするのは、不効率(inefficient)かつ効果がない(ineffective)のですが、まずは本の内容について検討してみましょう。
『システム英単語』の売りは「ミニマルフレーズ」とコンピューター分析による試験に「出る英単語」の2つです。
ミニマルフレーズ
ミニマルフレーズとは、英単語をできるだけ短い(minimal)句(phrase)で覚える暗記法のことを指します。
「『システム英単語』では、単語記憶のパワフルな武器として、だらだらした例文を廃し、超コンパクトなフレーズを採用した。「minimal (最小限)の長さ=最小の労力で最大の学習効率を上げる」という思いを込め、minimal phraseと名付けた。」(p. XII)
刀弥/霜氏は次のように述べています。
「フレーズで覚えることがどうして人気を博したのでしょう?
それは最も自然、かつ科学的なやり方だからでしょう。いくつかの単語の記憶法の長所短所を検討してみましょう。
文字通り「単」語として「intellect・知性」「strict・きびしい」というように覚えていくやり方。これは前世紀の遺物であるという以外にありません。一匹の魚と水だけがはいったすいそうが何百とならんだ水族館のように荒涼としてたイメージです。
「長文の中で覚えていく」という方法。もちろんそれも大切です。「単語帳なんか使うな! 長文の中で覚えろ!」と言うカッコイイ先生もいるでしょう。理想論としてはすばらしい。でも残念ながら現実的とは言えません。長文には、覚えても無意味に近いまれな意味用法も出てきて、それが頭にこびりつく可能性もあります。またこのやり方で重要な語と用法・意味をもれなく身につけるには、ぼう大な量、千ページ単位の英文を読む必要があります。今のあなたにはそんな時間とエネルギーがありますか?ある、という方は本書を使う必要はありません。
一つの長い例文に4つも5つもの単語をつめこむ方式。これは一見、能率がいいように思われます。しかし一つ一つの単語の印象は薄くなってしまいます。また多くの単語のもっとも重要な意味・コロケーションを一文に盛り込むのは至難の業です。なにより、記憶の単位としては大きすぎ、自然ではありません。
(IV-V)
どれだけの人がこの説明に納得したのでしょうか。
刀弥/霜氏は4つの英単語の覚え方があると述べています。『涼宮ハルヒの憂鬱』第1話で、初めてハルヒに会ったときのキョンのセリフを使って、その違いを区別してみましょう。coincidenceは「偶然の一致」という意味だとどうやって覚えるか?
①word―文字通り「単」語として覚えるやり方―「出る単」方式
coincidence 偶然の一致
②minimal phrase―短いフレーズで覚えるやり方―「シス単」方式
just a coincidence 単なる偶然の一致
③sentence―例文で覚えるやり方
Looking back, I want to believe that it was just a coincidence. しみじみと思う。偶然だと信じたいと。
④essay―長文の中で覚えるやり方―「速読速聴」方式
Is that supposed to be funny? There stood before me this amazingly beautiful girl. I bet everyone thought she was kidding. But it wasn’t a joke. And it wasn’t anything to laugh about. Haruhi is always dead serious. And that’s how we first met. Looking back, I wanna believe that it was just a coincidence.
これ、笑うとこ?偉い美人がそこにいた。誰もが冗談だと思っただろう。結果から言うとそれはギャグでも笑い所でもなかった。ハルヒはいつも大マジなのだ。こうして俺達は出会っちまったあ。しみじみと思う。偶然だと信じたいと。
③で覚えるのが1番efficient/effectiveですが、②がベストであると主張する刀弥/霜氏の説明を見直してみます。
英単語の覚え方
本屋に行けば1ダースを優に超える英単語集が売られています。どれを選べばいいのでしょうか。
この選択をするためには、「良い」英単語集とはどういうものかちゃんとわかっていなければいけません。「良い」英単語集とはつまるところ、efficientでeffectiveな単語集と言えます。efficientは「効率的な」、つまり「楽に英単語が覚えられる」単語集がefficientであり、またeffectiveは「効果的な」、つまり、覚えた単語の語感をちゃんと会得し、いろんな場面で応用して使えた場合、その英単語をeffectiveに覚えたということができます。
例えば、シス単では「uncover new evidence 新しい証拠を明らかにする」(p. 222)と出ていますが、シス単を使って、uncoverという単語を見て、さっと「~を明らかにする」という意味を思い出せたら、もしくは逆に「~を明らかにする」という意味からuncoverという単語を思い出せたら、あなたにとってシス単はefficientな単語集と言うことができます。そして、シス単を使って、その覚えた語の語感をちゃんと理解し、個々の文脈の中で正確に意味を把握し、英作文でその単語を自由自在に使えたら、シス単はeffectiveな単語集ということになります。
では、シス単はefficientでeffectiveな英単語集と言えるのでしょうか。答えはNoです。シス単はinefficient(不効率)かつineffective(効果のない)英単語集です。1つ例を出して考えてみましょう。
coincidenceは「偶然の一致」という意味ですが、1番楽に単語を覚える方法は、イメージができるセンテンスの中で覚えることです。その単語が使われる場面をイメージできれば、そのイメージを通じて楽に思い出すことができます。「coincidence=偶然の一致」で覚えようとしてもすぐに忘れます。ミニマルフレーズ式に「curious coincidence=不思議な偶然の一致」で覚えようとしてもcuriousに続く名詞は数限りなくあるので、curiousからcoincidenceという単語をイメージすることはできず、覚えるのが大変です。では次の英文を音読しながら覚えるというやり方はどうでしょうか。
Looking back, I want to believe that it was just a _________.
looking backは「振り返ってみると」という意味ですが、この文はあるアニメの主人公のセリフが英訳されたものです。そのセリフとは、「こうして俺たちは出会っちまったなあ。しみじみと思う。偶然だと信じたいと。」
誰のセリフかわかりましたか。そうです、『涼宮ハルヒの憂鬱』で、教室でハルヒと初めて会ったときのキョンのセリフです。ハルヒとの出会いを「偶然の一致」と信じたいというキョンの気持ちを表していますが、この文章をキョンになったつもりで3回声を出して読んでください。
Looking back, I want to believe that it was just a coincidence.
Looking back, I want to believe that it was just a coincidence.
Looking back, I want to believe that it was just a coincidence.
10秒で3回読めます。これでcoincidenceが「偶然の一致」という意味であることも、「偶然の一致」は英語でcoincidenceということも覚えました。では1週間後に次の文を読んで下さい。
Looking back, I want to believe that it was just a __________.
ミニフレーズ方式で「curious __________=不思議な偶然の一致」で覚えても記憶が定着しないので、1週間後にはほとんどの人が下線部に何が入るか思い出すことができません。なぜならcuriousという形容詞が使われるフレーズは無尽蔵にあるからです。curious episode (奇妙な出来事)でもcurious instance (興味深い例)でもcurious sight (珍しい光景)でもなく、curiousに続く名詞はcoincidenceでないといけない必然性は何もありませんから、curiousという形容詞からcoincidenceを思い出すことはできず、結局、ミニフレーズ式だと、「coincidence・偶然の一致」で覚えないといけません。つまり、「出る単」方式とさして変わらないわけです。
それに対しセンテンス方式だと、7~8割の人が下線部に何が入るか思い出すことができます。なぜかというと、センテンスにすることで主体とコンテクストが特定化されて、この下線部には1つの英単語しか入らないという必然性が生まれるからです。むろん、 Looking back, I want to believe that it was just a _________. という文章だけを見れば、下線部はcoincidenceでないといけない必然性は生まれません。dream (夢)でもいいしjoke (ジョーク)でもかまいません。でもハルヒを見たことがある人は必ずこの下線部にはcoincidenceを入れます。なぜなら『涼宮ハルヒの憂鬱』というアニメドラマが全てのセリフをコンテクスト化し、全てのセリフは必然性の下に関連づけられるからです。英単語は長文の中で覚えた方がよいとよく言われるのは、長い文章がアニメの台本のように、個々の文章(アニメではセリフ)に出てくる単語をコンテクスト化し、この部分にはこの単語でしかないという必然性を生み出すからです。
また、イメージ化しやすい例文は類推しやすいので、ほかのコンテクストでも簡単に応用することができます。「curious coincidence(不思議な偶然の一致)」から何を連想できますか? 「ちょっと待って、ええと何があるかなあ…」ってなるでしょう。では、 Looking back, I want to believe that it was just a coincidence. ではどうでしょうか。教室で変なクラスメートに初めて会ったときのセリフというコンテクストがあるので、すぐにクラスメートの変な奴を思い浮かべて、こいつと同じクラスになるのは… Looking back, I want to believe that it was just a coincidence. とすぐ言えるでしょう。ここまできたら、coincidenceだけでなく、「look back = 振り返ってみる」も完璧に頭に入って、このキョンのセリフをそらで言えるようになっていませんか。はい、ラストにもう一回。
Looking back, I want to believe it was just a coincidence.
完璧にこの文章をマスターしましたね^^。
同義語プロブラム
では、「第1章 Basic Stage」に収録されている英単語を例に出してミニマル・フレーズの問題点を明らかにします。まずは、「同義語プロブレム」。
「明らかにする」は英語でなんと言うでしょうか。『システム英単語』にはclarifyとuncoverという単語が収録されています(elucidateもついでに覚えておきましょう)。
p. 269 clarify the meaning of the word 単語の意味を明らかにする
p. 221 uncover new evidence 新しい証拠を明らかにする
同じ「明らかにする」という意味になっていますが、ではclarifyとuncoverは全くの同義語と見なしていいのでしょうか。uncover the meaning of the wordもしくはclarify new evidenceと逆にしても大丈夫でしょうか。
逆にしてもかまいませんが、この2つの動詞は語感が違うので意味が変わることに気をつけないといけません。clarifyはなにかあいまいなものを明らかにするという意味ですが、uncoverの場合は、意図的に隠されたものを明らかにするという語感があります。つまり、clarify the meaning of the wordだと、単語の意味をよりはっきりさせるということ、uncover the meaning of the wordだとこの単語の隠された裏の意味を暴き出すというニュアンスが生まれます。
このような同義語の語感を会得する方法は2つあります。ひとつは英英辞典で単語の意味を調べることです。もうひとつは単語やミニマル・フレーズではなく、文章の中で英単語を覚えることです。Cambridge Advanced Learner’s Dictionaryでは
Could you clarify the first point please? I don’t understand it completely.
The investigation uncovered evidence of an illegal trade in wild birds.
という例文が出ています。「最初のポイントをもっと詳しく説明してもらえますか?まったく理解できなかったので」、「この調査は野鳥の密貿易が行われている証拠を明るみに出した」という意味になりますが、意図的に隠されたものを明らかにするという場合はclarifyではなくuncoverを使うということが、この例文を見て理解できるでしょう。ミニマル・フレーズ方式ではこういった個々の単語の語感をつかみ取るのが困難になります。
では、『システム英単語』の「同義語プロブレム」をさらに見てみます。語感のちがいを無視したミニマル・フレーズ方式は、inefficiency(思い出す際の必然性が生じないので英単語を覚えにくい)とineffectiveness(語感をつかめないので覚えた単語を使って英文を書くことができない)を生み出します。以下の英単語は「第1章 Basic Stage」のみをチェックして見つけたものです。『システム英単語』でいくら英単語を覚えようとしても、語感をつかめないため、似たような意味の英単語の使い分けがまったくできないことが見て取れます。
●expect (p.2) – anticipate (p.214)
expect you to arrive soon 君がすぐ来ることを予期する
anticipate the future 未来を予想する (=expect)
●force (p.3) – compel (p.210)
be forced to leave 立ち退きを強制される
compel him to speak English 彼に英語を話すことを強制する
●suggest (p.5) – propose (p.43)
suggest a new way 新しいやり方を提案する
propose a new way 新しいやり方を提案する
●tend to (p.6) – be likely to (p.80) – be apt to (p.177) – be liable to (p.253)
tend to get angry 腹を立てがちである
He is likely to win. 彼が勝つ可能性が高い
be apt to forget it そのことを忘れやすい
be liable to forget it それを忘れがちである
●enter (p.8) – join (p.10)
enter college at fifteen 15歳で大学に入る
join the baseball club 野球部に入る
●provide (p.3) – supply (p.12)
provide him with information 彼に情報を与える
supply with the city with water その都市に水を供給する
●gain (p.12) – acquire (p.16) – obtain (p.40)
gain useful knowledge 有益な知識を得る
acquire a language 言語を習得する
obtain information about him 彼に関する情報を得る
●seek (p.12) – ask – call on
seek help from the police 警察に助けを求める
ask the police for helpともcall on the police for helpとも言えます。
●claim (p.13) – argue (p.15) – insist on (p.19)
He claims that he saw a UFO. 彼はUFOを見たと主張する
argue that he is wrong 彼は間違っていると主張する
insist on going there alone 一人でそこに行くと言い張る
●reduce (p.9) – decline (p.18)
reduce weight 体重を減らす
My memory began to decline. 記憶力が低下し始めた
decrease、lowerとも言えますが、シス単には収録されていません。
●confuse (p.18) – puzzle (p.27) – perplex (p.274)
be confused by her anger 彼女の怒りに当惑する
be puzzled by the problem その問題に頭を悩ませる
perplexing questions 困惑させる質問
●examine (p.19) – check (p.327)
examine every record あらゆる記録を調べる
check
●convince (p.21) – ensure (p.106) – assure (p.111)
convince him of our success 彼に成功を確信させる
ensure your success 君の成功を保障する
assure you that you will win 君が勝つことを保障する
●depend on (p.6) – rely on (p.22)
Everything depends on him. すべては彼しだいだ
rely on their power 彼らの力に頼る
●extend (p.23) – prolong (p.222)
extend my stay for two days 滞在を二日延長する
prolong life 寿命をのばす
●admire (p.24) – impress (p.70)
admire her English ability 彼女の英語力に感心する
impress
●preserve (p.24) – protect (p.37)
preserve forests 森林を保護する
protect children from danger 危険から子どもたちを守る
●adapt to (p.27) – adjust to (p.33)
adapt to the change 変化に適応する
adjust to a new school 新しい学校に慣れる
●appeal to (p.27) – resort to (p.120)
appeal to feelings 感情に訴える
resort to violence 暴力に訴える
●connect (p.20) – combine (p.27)
connect Honshu with Shikoku 本州と四国をつなぐ
combine music and drama 音楽と演劇を結合させる
●own (p.31) – possess (p.43)
own five cars 5台の車を所有している
possess great power 大きな力を持っている
●notice (p.8) – perceive (p.32)
notice the color change 色彩の変化に気づく
perceive danger 危険に気づく
●frighten (p.29) – alarm (p.32) – scare (p.117)
be frightened of death 死を恐れる
The noise alarms the dog. その音が犬をおびえさせる
The noise scares him. その音が彼をおびえさせる
●derive (p.32) – originate (p.71)
This word derives from Latin. この語はラテン語に由来する
originate from
●neglect (p.32) – ignore (p.38)
neglect human rights 人権を無視する
ignore the doctor’s advice 医者の忠告を無視する
●adapt to (p.27) – adjust to (p.33) – be accustomed to (p.174)
adapt to the change 変化に適応する
adjust to a new school 新しい学校に慣れる
become accustomed to driving 車の運転に慣れる
●satisfy (p.39) – meet (p.304)
satisfy the needs of students 学生の要求を満たす
meet people’s needs 人々の必要を満たす
●differ from (p.40) – diverge from
My opinion differs from hers. 私の考えは彼女と異なる
diverge from(未収録)とどう違う?
●select (p.42) – choose
select the best answer 最良の答えを選ぶ
choose(未収録)とどう違う?
●handle (p.43) – deal with (p.315)
how to handle problems どう問題に対処するべきか
deal with the problem 問題を処理する[あつかう]
●blame (p.23) – criticize (p.43)
blame others for the failure 失敗を他人のせいにする
criticize him for being late 遅刻したことで彼を非難する
●abandon (p.25) – quit (p.45)
an abandoned child 捨てられた子ども
quit school 学校をやめる
●respond to (p.22) – react to (p.45)
respond to questions 質問に答える
react quickly to light 光に素早く反応する
●rate (p.49) – proportion (p.62)
at the rate of 40% a year 年40%の割合で
the proportion of boys to girls 男子と女子の比率
●indication (p.16) – sign (p.49)
indication 指示、暗示、兆候
a sign of spring 春のきざし
●advance (p.49) – progress (p.50)
advances in science 科学の進歩
make progress toward peace 平和に向けて前進する
●passage (p.51) – paragraph
Read the following passage. 次の一節を読みなさい
paragraph (未収録)との違いは?
●project (p.53) – plan
a business project 事業計画
plan (未収録)との違いは?
●region (p.54) – district (p.156)
a mountain region 山岳地方
the city’s business district その都市の商業地区
●feature (p.54) – characteristic (p.55)
features of human language 人類の言語の特徴
unique characteristics ユニークな特徴
●scene (p.56) – spot
the scene of the accident 事故の現場
spot (未収録)との違いは?
●basis (p.56) – foundation (p.112) – ground (p.321)
a scientific basis of his theory 彼の理論の科学的根拠
On what grounds do you say that? どんな根拠でそう言うのか
foundation 基礎、土台
●medium (p.56) – means (p.312)
the medium of communication コミュニケーションの手段
a means of communication コミュニケーションの手段
●duty (p.56) – obligation (p.114)
It is my duty to help you. 君を助けるのがわたしの義務だ
●atmosphere (p.58) – air (p.334)
CO2 in the atmosphere 大気中の二酸化炭素
airとの違いは?
●property (p.58) – asset (p.230)
private property 私有財産
a valuable asset 価値ある財産
●delight (p.58) – pleasure (p.85)
give a cry of delight 喜びの声をあげる
pleasure 喜び、楽しみ
joy, enjoyment(未収録)との違いは?
●background (p.59) – career (p.70)
people from different backgrounds 経歴の違う人々
a long career as an actress 女優としての長い経歴
●effect (p.48) – influence (p.48) – impact (p.59)
the greenhouse effect of CO2 CO2の温室効果
have a bad influence on children 子どもに悪い影響を与える
the impact of TV on children 子どもに対するテレピの影響
●institution (p.59) – organization (p.68)
government institutions 政府の諸機関
an international organization 国際的な組織
●appointment (p.61) – reservation (p.28)
have an appointment with a doctor 医者に予約してある
reservation 予約、保留
●branch (p.61) – discipline (p.330)
a branch of science 科学の一分野
scientists of many disciplines いろんな分野の科学者たち
●transport (p.62) – transportation (p.62)
air transport 航空輸送
transportation 輸送、運送
●nation (p.63) – state (p.311)
the Asian nations アジアの諸国
a state secret 国家の機密
country(未収録)との違いは?
●period (p.63) – era (p.153) – age (p.91)
the Cold War period 冷戦時代
the beginning of a new era 新しい時代の始まり
age 年齢; 時代
●skill (p.64) – technique (p.73)
learn basic skills 基本的な技術を学ぶ
the technique of film-making 映画作りの技術
●custom (p.51) – habit (p.65)
the custom of tipping チップを払う習慣
form the habit of getting up early 早起きの習慣がつく
●situation (p.63) – circumstance (p.72)
in a hopeless situation 希望のない状況で
Circumstances have changed. 状況が変わった
●survey (p.74) – investigation
according to a new survey 新しい調査によると
investigation(未収録)との違いは?
●equipment (p.71) – instrument (p.75)
a place with high-tech equipment ハイテク装備の飛行機
a medical instrument 医療器具
●path (p.75)
the path to victory 勝利への道
road(未収録)との違いは?
●concept (p.70) – notion (p.76)
the concept of time 時間の概念
the notion of freedom 自由の概念
●material (p.50) – substance (p.76)
produce new materials 新しい物質を作る
a dangerous substance 危険な物質
●victim (p.76) – casualty
victims of the war 戦争の犠牲者
casualty(未収録)との違いは?
●campaign (p.78) – movement
the campaign to plant one million trees 100万本の樹を植える運動
movement(未収録)との違いは?
●advertising (p.78) – advertisement (p.78)
tobacco advertising たばこの広告
advertisementとの違いは?
●result (p.47) – consequence (p.79) – outcome (p.169)
the result of the test テストの結果
a necessary consequence 必然的結果
the outcome of the race レースの結果
●obvious (p.83) – apparent (p.103) – clear
an obvious mistake 明白な間違い
apparent, clear(未収録)との違いは?
●suitable (p.17) – proper (p.84) – appropriate (p.97)
the proper use of words 言葉の適切な使い方
the most appropriate title 最も適切な題名
suitable 適した、ふさわしい
●positive (p.85) – active (p.96)
positive thinking 積極的な考え
lead an active life 活動的な生活をする
●significant (p.85) – important
a significant difference 重要な違い
important(未収録)との違いは?
多義語プロブラム
刀弥/霜氏はこう述べています。
ミニマルフレーズ記憶法には、孤立した単語を覚える味気なさも、変な意味用法を先に覚えてしまう危険も、いたずらに複雑な例文を覚えるムダもありません。
p.V
なんのことかわからない?小学生のころ使った「漢字ドリル」を思い出してください。そこにならんでいたのは、まさに日本語のミニマルフレーズでしょう。「あう」「あつい」ではなんのことかわからないのに、「友人とあう」「あつい夏」と聞けば必要十分なイメージが浮かびましたね。「ヒロシは昨日町で友人とあった」などという例文にする必要はありません。母国語でも、私たちの頭につまっている言語知識のほとんどは、孤立した単語でも、長い例文でもなく、「ミニマルフレーズ」に似た、語と語の結合体にちがいありません。
そんなバカなことがありますか。漢字と英単語の暗記をいっしょんたくりにしてよかわけなかろうもん(博多弁)。漢字の暗記というのは単なる書き取りです。ミニマルフレーズにする必要もありません。「あう->会う」で十分でしょう。英語だって単語のスペルを覚えるんだったらわざわざ長い例文を使って覚える必要なんてありません。「<バカな>はステューピッドでスペルはs, t, u, p, i, d」で覚えればいいことです。
ほんと、刀弥/霜両氏はしょうもないことを言います。
前回、同義語プロブレムについて議論しました。『システム英単語』は例文を使わないので、個々の英単語の語感をつかめず、これで英単語を覚えても同義語の使い分けができません。ミニマルフレーズは不自然であり、不自然なことをしてものを覚えることができるほど人間の頭は柔軟にできていません。今回は多義語について考えてみます。
多義語は複数の意味を覚えるべき
多義語はどう暗記すべきか。ほとんど使われない「意味」は覚えなくてもいい(p.VIII)という二人の主張は正しいと思います。たしかにindustryを「勤勉」という意味で使う英文なんてめったに出ないし、受験生はそんな意味をいちいち覚える必要はありません。ではよく使われる多義語はどうすればいいのか。シス単では第5章に多義語を集めていますが、第5章以外でも多くの収録英単語に複数の意味が出ています。でもミニマル・フレーズは1つしか出ていないので丸暗記するしかないようです。例えば、supportのミニマル・フレーズは「support the President 大統領を支持する」と「support the theory 理論を立証する」ですが、supportの意味は①~を支持する、援助する②<家族など>を養う③~を立証する、裏付ける [名]支持、援助と数多く出ています。これら複数の意味は丸暗記しろと言うのがシス単のスタンスです(ちなみに「立証する」はふつう、proveかverifyと訳されます。シス単にはverifyも収録されてませんね)。
では本来、多義語はどうやって覚えるべきか。答えはシンプル。ひとつひとつ例文を使って覚えるしかありません。多義語を1つの単語と思ったらいけません。よく使われる意味が3つあれば単語を3つ覚えるつもりでセンテンスの中でそれぞれの意味を覚えましょう。重要な意味が3つある英単語を100マスターしたら、覚えた英単語の数は100ではなく、300です。滅多に使われない用法を覚える必要はありませんが、英単語の意味は一番大事なのを1つだけ覚えればよいといった考えはは排せないといけません。たとえば、刀弥/霜氏は、seniorを「年上の」、be senior to~「~より年上だ」で覚えるなと主張しています。
「★be senior to A 「Aよりも年上だ」は、実際には滅多に使われない。名詞のseniorで「年上の人」はあるが、まれ。」(p. 176)
seniorは代わりに「(役職などが)上級の; 先輩の」で覚えるべきだそうです。例文はa senior member of the club (クラブの先輩の部員)。でも「◆senior citizens 「高齢者、お年寄り」(=seniors)」という熟語も出ています。
あのう、senior citizenのseniorって「(役職などが)上級の; 先輩の」じゃなくて「年上の」って意味なのでは? 英英辞典にはseniorは①older、②high or higher in rankと出ています。意味を2つとも覚えればいいんですよ。どちらもよく使われるんですから。本当にネイティブはbe senior toという表現を使わないのでしょうか。Google in Englishで“He is senior to”で検索したら75,700件も出てきます。“He is older than”は176万件も出ましたから、たしかに後者よりもは使われていませんが、試験の穴埋め問題にもよく出るし、ついでに覚えておけばいいんですよ。senior = olderと覚えていちいち文句を言われる筋合いはありません。ちなみにbe senior toは「~より(役職などが)上級の」という意味になることもあるのでお気をつけを(例文He is also a diplomat, but senior to me.)。
また、appeal(p. VI)は「訴え」ではなく、「魅力」と覚えるべきと主張していますが、p. 27に載っているミニマルフレーズは、「魅力」ではなく「訴え」についてです。
appeal to feelings 感情に訴える
動詞で「訴える」という意味を覚えるべきなのであれば、ついでに名詞で「訴え」という意味になることも覚えていいじゃないですか。名詞では「魅力」という意味にもなるし、「訴え」という意味で使われることもある。それだけのことです。
interactionは「相互作用」ではなく、「<人と人との>交流」と覚えるべきだそうです(pp.VI, 142)。interactionとは2つ以上のものが「相互に(inter-)」+「作用(action)」するということです。もの同士の作用は「相互作用」、人同士が相互に作用するのは人の「相互作用」つまり「交流」という意味になるだけのことです。interactionの根源的な意味は「交流」ではなく「相互作用」なので、「相互作用」という意味は、「ほとんど無視できる」とか「ピントがずれている」(p.VI)なんて決して思わないでください。
シス単は多義語のそれぞれの意味にフレーズをつけているのは、第5章の179語のみです。その他の単語は、シス単を使ってはまったくなすすべがありません。いくつか例を出しておきます。
sanctionは複数形になると「制裁」という意味になります。285ページに
impose economic sanctions 経済制裁を課す
というフレーズが出ています。では、government-sanctioned drugは何という意味になるでしょうか。「政府が制裁を課した薬」と訳してはいけませんよ。答えは「政府が認可した薬」です。sanctionは動詞にも名詞にもなりますが、「制裁(する)」だけではなく、「認可(する)」というまったく逆の意味も覚えないといけません。
では、ほかの例も出しておきましょう。reservationという単語の意味をご存じでしょうか。シス単には「予約、保留」(p.28)で収録されていますが、例文なしでこの2つの意味をどうやって覚えることができるのでしょうか。Can I make a reservation?は「予約できますか?」と「保留してもらえますか?」のどちらかわかりますか?また、シス単には「appointment (人と会う)約束、(医院などの)予約」(p. 61)という単語も収録されていますが、同じ「予約」という意味ですよね。では「予約」という意味で使うときは、reservationとappointmentのどちらでもかまわないのでしょうか(多義語プロブレム)。実はまったく使い分けが異なります。先生に会う予約をするときはappointment、ホテルや航空券の予約をするときはreservationを使います。ミニマル・フレーズ方式だと語感をつかめないから、使い分けができません。
anxiousは「①(未知のことを)心配して、不安な ②切望して」(p. 90)となっていますが、これも2つの意味がまったく異なりますよね。<I am anxious to marry Aya Hirano.>と<I am anxious about getting married to Aya Hirano.>のどちらが、平野綾との結婚を切望していることになるのでしょうか。例文を使わないで2つの意味を覚えることができますか?
apparentは「①明らかだ ②外見上の、うわべの」(p. 103)。明らかなのとうわべだけのってこれも2つの意味がまったく逆ですよね。例文なしで2つのまったく異なる意味を覚えることができますか?awfulは「ひどい、いやな(=terrible)」(p. 176)とシス単には載っていますが、<I am awfully glad to meet you.>だと「あなたに会えてとても嬉しい」という意味になりますよ。madは「腹を立てた ☆「狂った」とは限らない」(p.331)と出ていますが、<I am mad about you.>と女の子から言われて「なに~、なんで腹を立てられなきゃならねえんだよ」と切れてはいけませんよ。「あなたに夢中」って意味ですからね。terrificは「What a terrific idea! なんとすばらしい考えだろう ■terribleは「ひどい、恐ろしい」の意味だが、terrificには、このような悪い意味はない」(p.293)と出ていますが、terrific painといったら「激痛」という意味ですからね。
多義語をバカにしてはいけません。ミニマル・フレーズで本当に多義語をマスターできるか1度再考してみた方がよさそうですね。
語法プロブラム
これまで述べてきたように『システム英単語』はとくに、同義語と多義語を覚えるときに支障をきたします。その他、本書を読んで問題だと感じたことをいくつか記しておきます。その多くは他の英単語集にも当てはまる問題です。
どの英単語集も和訳を見て英単語を思い浮かべることで英単語を暗記しようとします。これが問題です。和訳はあくまでも英単語を思い出すための補助手段にすぎません。和訳がなくても英単語が思い出せるような単語帳作りをしないといけないのに、受験生の誰もがそれをわかっていません。
次の文章を声を出して読んでください。
I do not believe that Yuki Saito will become a great ________.
下線部に何が入りますか? 斎藤佑樹のことだからpitcherだろうってすぐ推測つきますよね。日本語の補助なんて何も必要ないでしょう。不必要なのに、日本で売られている英単語集はわざわざ「投手 pitcher」と記し、「投手」という日本語からpitcherを連想するよう促します。では、次の例文も読んでみてください。
Yuki Saito would become a great pitcher if he starts making a batter hit the ball instead of _______ing it.
の下線部にはmissが入ります。要するに、バッターに空振りさせるよりも、(的を外して)打たせることができるようになったら、斎藤佑樹もすごいピッチャーになれるよと言っているわけですが、こういう風に大体の意味をつかんだら、いちいちこの英文の定訳を見なくてもいいし、下線部には「(狙ったもの)を外す」という意味の動詞が入るということをいちいちチェックしなくても、missという動詞が入るのがわかります。それなのになぜいちいち「miss (狙ったもの)を外す」という風に日本語を介在させるのでしょうか。こういう風にいちいち日本語を交ぜて英語を勉強しようとすると、いくらたっても英語力がつきません。もう一度、上の文章を声を出して読んでください。
難なく空欄もmissと言えて文章を読めたでしょう。1週間後にもう一度試してください。ほとんどの人が下線部にmissが入るのを覚えていますから。このようにちゃんとした文章だとコンテクストができて英単語も思い出しやすくなるのに、わざわざコンテクストを壊して、センテンスをフレーズにし、さらにそれを短くするミニマル・フレーズ方式というのは、ほんとばからしくて駿台の先生って本当は英語ができないんじゃないの?とつい言いたくもなります。
和訳を見ながら英単語を思い出すのはineffcientかつineffectiveです。
和訳と英語が一致しない
文法的に英文とつながりのある形で和訳されていないと、和訳を見て英文を思い出すのが大変です。「demand more money さらに金を要求する」(p. 6)の「さらに」は副詞ですが、moreは形容詞です。「さらに」からmoreを思い浮かべるのは大変だし、そもそもおかしいです。「I don’t want to bother you. あなたを困らせたくない」(p. 26)では、日本語には主語がありませんが、英語ではI(私は)になっています。主語が省略された日本語の文章から英文を連想するのは大変です。「a native language 母国語」(p. 83)となっていますが、「母国語」を訳せろと言われたら、日本語に引きずられてmother languageもしくはmother tongueと訳しそうです。「persuade them to go back 彼らを説得して帰らせる」(p. 24)と「urge him to stop smoking 禁煙するよう彼を説得する」(p. 35)。なぜ前者の和訳にあわせて、後者も「彼を説得して禁煙させる」とは訳さないのでしょうか?ちなみにpersuadeとurgeは語感がかなり違います。urgeをpersuadeとはちがい、話し合って相手を納得させるという意味ではなく、強引に相手を動かすというニュアンスが強いです。
和訳の意味が間違っている
「display a talent 才能を誇示する」(p. 26)―誇示とは誇らしげにもしくは得意になって示すことですが、displayは単に「示す」だけです。「a difficult task 難しい仕事」(p. 67)―のtaskは「★厳しい骨の折れる仕事」と説明されていますが、そうとも限りません。easy task (楽な仕事)、simple task (単純な仕事)といった表現もあります。「water and gas service 水道とガスの公共事業」―ここでのserviceとは公共の事業ではなく、公共のための事業です。公共目的の事業だからそれを行うのは公共機関の場合が多いですが、いつもそうとは限りません。social serviceを「(政府による)社会事業」と訳していますが、個人がおこなう「社会奉仕」もsocial serviceです。
語法がわからない
語法が重要な単語についても文法的な説明はなく、ミニマルフレーズさえない場合が多い。「◆be reduced to A 「Aになる、変えられる」 ★より低い[小さい]状態への変化に用いる 例 be reduced to poverty 「貧乏になる」」はかなり詳しく説明している方だが、これを読んだだけで本当に<be reduced to>の構文を使えるようになるのか。「◆B be familiar to A 「BがA(人)によく知られている」」(p.81)はミニマルフレーズもなし。「No Smoking in Public Places 公共の場では禁煙」(p.80)は、なぜin以外の単語の最初の文字が大文字なのかの説明なし。
ミニマル・フレーズだと冠詞の用法がとくにわからなくなります。「share a room with a friend 友人と部屋を共有する」(p.6)では不定冠詞のa、「describe the lost bag なくしたバッグの特徴を言う」だと定冠詞のtheがつく理由はわかりますか。同じ住民でも「residents of New York ニューヨークの住民」(p.62)では冠詞がつかず、「the inhabitants of the country その国の住民」(p.160)ではtheがつくのはなぜ?「the natural environment 自然環境」(p.64)となっているけど、a natural environmentだと間違いになるの?「stars in the universe 宇宙の星」(p.77)では定冠詞がついてthe universeになっているけど、同じ「宇宙」の意味のspaceでは冠詞が普通つかないと知っていた?なぜそうなのかわかる?「the former president 前大統領」(p.85)でtheがつく理由は?<a former president>にするとどう意味が変わる?
このようにミニマル・フレーズでは冠詞の意味合いがまったくわからなくなります。なんでこういった問題だらけの英単語集が売れるんだろう? 受験英語は謎ばかりです。
その他諸々
『システム英単語』雑感はこれで終わりにします。最後に言い忘れたことをいくつかコメント。
発音記号
多くの英単語の下に発音記号も載せていますが、発音記号は赤色じゃないので赤シートを使っても発音記号が丸見え。発音記号から隠れている英単語が何かわかるので、赤シート使う意味ないじゃない。
意味ないじゃん!!
コンピューター分析にする試験に出る英単語のみを収録
入試データベース(入試問題7,000回分、設問数30,000題以上)を使って必須英単語を取捨選択したことは評価できますが、「Bank of Englishというデータベース、アメリカの有名雑誌TIME、映画のシナリオなど、現代の実用英語のデータも可能な限りサーチした」そうです。そういうことをする理由がよくわかりません。日本の英語教育は基本的にアメリカ英語がベースになっていますが、Bank of EnglishはイギリスのデータベースなのでBritish Englishに偏っています。また、TIMEの記事や映画のシナリオが日本の大学入試には出ることはまずないので、それらを調べても意味ないでしょう。
首なし英文の不自然さ
ネイティブの友人に、『システム英単語』を見せ、日本の高校生はこういう英単語集を使って、英単語を覚えているんだよと説明したら、It’s creepy.と言われました。creepyとはおぞましくて気持ち悪いというような意味の形容詞です。実はわたしも初めて『システム英単語』を見たとき気持ち悪いと感じました。なぜそういう気分になるかというと、主語をカットしたフレーズが英文として不自然だからです。日本語では「私はあなたが好きです」の主語を外して「あなたのこと好きなんだ」と言ってもかまいません。でも英語で I love you. の「love 愛している」だけを覚えたいから「love you あなたを愛している」にするというのは明らかに変です。主語をカットした首なし英文はおかしいかと思います。