英語にはscissors (はさみ)やglasses (眼鏡)のように常に複数形の名詞があります。このような複数形でしか使われない名詞をpluralia tantumと言います。日本語では「絶対複数」と訳されますが、本稿ではこのような絶対複数名詞を150ほど取り上げます。
英語にはscissors (はさみ)やpants (【米】ズボン、【英】下着のパンツ)のように常に複数形の名詞があります。glasses (眼鏡)も常に複数形です。このように複数形でしか使われない名詞をpluralia tantumと言います。plural-only (複数形だけ)という意味のラテン語です。日本語では「絶対複数」と訳されます。scissorsが絶対複数なのは、刃が2つ組み合わされたものとして認識されるからです。
同様に「メガネ」もレンズが2つ組み合わさったものと認識されるので複数形になります。
絶対複数名詞の複数形としての用法
絶対複数名詞は複数形扱いでそれ自体は数えられません。ハサミやメガネのように対になっている絶対複数名詞を数えるときは、a pair ofを用います。
I used a pair of scissors to cut the band-aid for covering my bleeding wound.
出血した傷口を覆うためにバンドエイドをハサミで切った。
「2つの眼鏡」はtwo pairs of glassesです。
Having two pairs of glasses should not be considered a luxury.
2つのメガネを持つことは贅沢なことではありません。
scissorsやglassesは複数扱いですが、a pair of scissorsやa pair of glassesは単数扱いになることに注意してください。pairs of scissors/pairs of glassesは複数扱いになります。
Many parents are afraid to let their young children use scissors because scissors are dangerous tools for them.
はさみは子供には危険な道具なので、多くの親が幼い子どもにはさみを使わせることを恐れている。
A pair of scissors is very useful for packaging and unpacking.
はさみは包装や開封にとても便利です。
Only two pairs of scissors are available in this art class.
この美術の授業でははさみは2本しか用意されていない。
絶対複数名詞は複数形扱いなので指示代名詞もthese/thoseがつき、this/thatがつくことはありません。
〇 These glasses are mine.
× These glasses is mine.
× This glasses are mine.
× This glasses is mine.
このメガネは私のです。
These glasses are great! They are fashion-forward and super affordable.
このメガネは素晴らしいです! 流行に敏感で、超手頃な価格です。
ここではthese glasses are…を「このメガネは」と訳しましたが、メガネが複数あってもthese glasses are…になり(その場合は、「これらのメガネは」と訳されます)、どちらなのかは文脈で判断するしかありません。
I bought some glasses a year ago.
①1年前にメガネを1つ買った。
②1年前にメガネをいくつか買った。
③1年前にコップをいくつか買った。
some, any, other, allは可算名詞と不可算名詞の双方に使えます。通常の名詞の場合、可算名詞だとsome booksのように複数形になり、不可算名詞だとsome smokeのように単数形になります。これが絶対複数名詞の場合は常に複数形の形をとるので単数か複数か判断しにくいです。また、glassの場合、「コップ」という意味もあるのでsome glassesは「いくつかのコップ」という意味にもとれます。①の意味の場合は、I bought a pair of glasses a year ago. と訳すのがよいです。
さらにややこしいのが、絶対複数名詞が形容詞的に使われる時に単数形になる場合があることです。例えば、「靴屋」はshoes shopではなくshoe shopと言います。「(英) ズボンプレッサー」はtrousers pressではなくtrouser pressです。女性が着るズボンをはいたスーツはpantsuitです。
しかし、「メガネケース」は複数形のままでglasses caseとなります。「洗濯ばさみ」もclothes pegです。ただし、glasses同じ意味のeyeglassesの場合は、「メガネケース」が単数形でeyeglass caseになります。どちらになるかは理屈で決まるわけではないので、ひとつずつ覚えていくしかありません。
以下、複数形の形をとる名詞を「対になる2つの部分からなるもの」、「学問」、「競技やゲーム」、「病気」、「地名」、「その他」の6つの項目に分けて紹介します。
対になる2つの部分からなるもの
英語では、2つのものが対になっているものは2つある部分が意識されて複数形になります。先に述べたハサミとメガネがそうですが、服と靴の多くも絶対複数名詞になります。人の足は通常2本あるためです。数えるときは、ハサミやメガネと同じように、a pair ofを用います。「3足の靴」だとthree pairs of shoesになります。
下着
pantsはアメリカではズボンを指しますが、イギリスでは下着を意味します。
underpantsだとイギリスでも下着のパンツを意味します。ちなみに「下着類」を意味するunderwearは集合名詞なので複数形になりません。下着のパンツにはいろんな種類がありますが、基本どれも複数形になると考えてよいです。
panties 【米】女性用パンツ
knickers 【英】女性用パンツ
男性用パンツにはbriefs, trunks, boxer briefs, boxers などがあります。
jockstrapは男性スポーツ選手が履く局部用サポーターのことです。jockstrapは1つ、2つと数えられます。1つの場合はa Jockstrap、2つの場合はtwo Jockstrapsになります。Tバックもしくはヒモパンを意味するthongも1つの場合はsがつきません。
bra (ブラジャー)もメガネのように2つあるのに「1つのブラ」はa braもしくはone braです。同じくbikini (ビキニ)も1つのときはa bikiniです。このあたりは理屈で考えても無駄で、英語ではそういうものだと割り切って1つずつ用法を覚えていくしかありません。
ズボン
アメリカでは「ズボン」をpantsといいます。イギリスではtrousersです。足は通常2つあるのでズボン関連の名詞は絶対複数になります。日本語でも複数形のままの「ジーンズ」はjeans、 「タイツ」はtights、「レギンス」はleggingsです。ラッパズボンやパンタロンとも呼ばれる裾口が広がったズボンはbell-bottomsと言います。
足のラインにぴったりとフィットした「スキニー・パンツ」(skinny pants)はskinniesとも言います。「オーバーオール」は英語では通常、複数形で使われてoverallsとなります。イギリスではdungareesと言います。
「カプリ・パンツ」(capri pants)はcaprisとも言います。丈が短い、細身でぴったりとしたズボンのことです。
アメリカでは男性用のパンツをshortsとも言いますが、「半ズボン」もshortsです。
「スラックス」は英語でもslacksです。「ゆるい」という意味のslackが由来の単語で、スーツのtrousersよりもはカジュアルなズボンをslacksと言います。アメリカでかつてよく使われていた言葉ですが、すでに古めかしくなっており、今のアメリカの若者はこの単語をほとんど使っていないようです。
「ズボン吊り」こと「サスペンダー」はベルトが2つあるので、英語では複数形になります。1人しか使っていなくてもsuspendersなわけです。
靴
靴は1足でも2つあるので複数形になります。「靴」はshoes、「スニーカー」はsneakers、「ブーツ」はboots、「ハイヒール」はhigh heels、「サンダル」はsandals、「スリッパ」はslippersです。
靴ではないですが、竹馬も2つで1セットなので片方だけを指さない限り-sがついてstiltsになります。
手袋と靴下とパジャマ
手袋と靴下も2つで1セットなので片方だけを指さない限り、gloves, socksと複数形になります。「ストッキング」もstockingsとなります。ストッキングは英国ではtightsとも言います。「パンティーストッキング」もしくは「パンスト」はpantyhoseと言います。pantyhosesとは言いません。pantyhoseで複数扱いだからです。だからパンティーストッキングが1つある場合はa pair of pantyhoseと言います。下の例文のように、pantyhose is…ではなく、pantyhose are…になります。
Like stockings or knee highs, pantyhose are usually made of nylon, or of other fibers blended with nylon.
ストッキングやニーハイと同様に、パンストは通常ナイロン製、またはナイロンに他の繊維をブレンドしたものを使用しています。
また、「パジャマ」も-sがついてpajamasになります。イギリスではpyjamasですが、パジャマの場合は上下があるから絶対複数になります。
メガネ
「メガネ」はレンズが2つあるのでglassesです。単数のglassだと「ガラス」、「コップ」という別の意味になります。昔は「メガネ」をspectaclesとも言っていましたが、今はこの単語はあまり使われません。「サングラス」はsunglassesです、「ゴーグル」はgoggles、ちなみに「双眼鏡」も絶対複数でbinocualrsと言います。ただし、「グーグルグラス」は単数形でGoogle Glassです。商標が絡むと複数形にしなくてもよいのでしょう。
ツール
「はさみ」はscissorsですが、硬いものを切るための大きめのはさみはshearsと言います。「枝切り鋏」はpruning shearsです。
「ペンチ」もnippersもしくはpliersで複数形になります。
pincersという工具もあります。
clippersはnail clippersだと「爪切り」、hair clippersだと「バリカン」、hedge clippersだと「剪定はさみ」を意味します。爪切りと剪定はさみが複数形になるのはわかりますが、「バリカン」が絶対複数になる理由はよくわからないです。
「ピンセット」はフランス語ではpincetteですが、英語ではtweezersと言います。
医療分野で使う「鉗子」はforcepsです。
「羅針盤」はcompass。日本語でも羅針盤のことを「コンパス」と言いますよね。では製図用の「コンパス」は? こちらは2本の脚から成っているのでcompassesと言います。韓国料理で使う「トング」も英語では常に複数形でtongsです。
「はかり」や「体重計」も複数形でscalesと言います。なぜ複数形になるかと言うと、昔のはかりが片方に分銅を載せて2つのバランスをとることで重さを測っていたからのようです。
「歯列矯正器」も上下の歯につけるので複数形でbracesとなります。「ヘッドホン」と「イヤホン」も耳は2つあるのでheadphonesにearphonesです。ただし、マイクがついていることが多い「ヘッドセット」は単数のままでheadset、髪をまっすぐにするためのストレートアイロンも絶対複数ではなくflat ironと言います。
このように2つのものが対になっていても絶対複数にならないものがあるので注意してください。
学問
-icsで終わる学問名があります。
aesthetics 美学
classics (ギリシャ・ローマの)西洋古典学
dynamics 動力学
economics 経済学
electronics 電子工学
ethics 倫理学
linguistics 言語学
mathematics 数学
physics 物理学
politics [英] 政治学 ※アメリカでは「政治学」はpolitical science
statistics 統計学
これらの学問名は不可算の単数形扱いです。絶対複数名詞ではないので注意してください。しかし、具体的なものを意味するときは複数扱いになります。例えば、economicsは単数扱いでは「経済学」、複数扱いでは「(国・家庭・企業などの)経済、経済状態」を意味します。
Economics is the study of how societies, governments, businesses, households, and individuals allocate their scarce resources.
経済学は、社会、政府、企業、家庭、個人が希少な資源をどのように配分するかを研究する学問である。
You need to understand that the economics in Japan are different from that of the United States.
日本の経済はアメリカとは違うということを理解する必要がある。
競技やゲーム
-sで終わる競技やゲーム名があります。これらは不可算の単数扱いになります。ただし具体的なものを意味するときは複数扱いになるので注意してください。
acrobatics 曲芸[軽業]の芸
aerobics エアロビクス
athletics 運動競技
billiards ビリヤード
charades ジェスチャー
checkers チェッカー
darts ダーツ、投げ矢遊び
dominoes ドミノ
gymnastics 体操
horseshoes 蹄鉄投げ遊び
hurdles ハードル競走 ※「100メートルハードル」はthe 100-meter hurdles、「400メートルハードル」はthe 400-meter hurdles
Olympics オリンピック
Pilates ピラティス
病気
-sで終わる病名がありますが、それらは不可算の単数扱いになります。
diabetes 糖尿病
measles はしか
mumps おたふく風邪
rabies 狂犬病
rickets くる病
shingles 帯状疱疹
地名
-sで終わる地名がありますが、それらは不可算の単数扱いになります。the Philippinesやthe United Statesのように複数の島や州から成るため複数形になっている地名は複数形として扱われると説明している英文法書がありますが、それは昔の慣行です。どちらも現在形の場合はareではなくてisで受けましょう。多数の国から成るthe United Nationsも単数で受けます。ただし、the Alpsは複数扱いのままなので注意が必要です。
The Philippines is one of the most westernized nations in Southeast Asia, a unique blend of eastern and western cultures.
フィリピンは東南アジアで特に欧米化が進んだ国の一つで、東洋と西洋の文化が独特に融合しています。
The United States is the fourth largest country in the world in area after Russia, Canada, and China.
アメリカはロシア、カナダ、中国に次いで、世界で4番目に面積の大きい国です。
In the area of peace-keeping, in particular, the United Nations has played an important role in Namibia achieving independence.
特に平和維持の分野では、国連はナミビアの独立に重要な役割を果たしてきた。
The Alps are the highest and most extensive mountain range system that lies entirely in Europe.
アルプスは、ヨーロッパ全体にある、最も高く、最も広大な山脈です。
Brussels ブリュッセル
the Alps アルプス
the Netherlands オランダ
the Philippines フィリピン
the United Arab Emirates アラブ首長国連邦
the United States アメリカ
the United Nations 国際連合
その他
ほかにも英語には複数形でしか使わない英単語がたくさんあります。以下、それらの単語で特に重要なものを羅列しますが、単数扱いのもの、複数扱いのもの、複数形でしか使わないもの、単数形だと意味が変わるもの、と語法がそれぞれ異なるので注意が必要です。大学受験レベルでもしっかり覚えておくべき単語は赤字にしているので、受験生は赤字の単語のみを確実に習得してください。
alms 施し物
amends 償い
annals 年代記
arms 武器
arrears 滞納金
ashes 遺灰
auspices 後援
barracks 兵舎
belongs 所有物
belongings 持ち物、所持品
bowels 腸(全体)
cahoots 共謀
clothes 衣服
congratulations おめでとー(^o^)
contents (容器の)中身、(本の)内容
crossroads 交差点、交差道路
customs 税関
drawers たんす
earnings (労働の対価としての)報酬、稼ぎ
entrails 内臓、はらわた
fireworks 花火大会、感情の爆発
funds 財源、資金 money that an organization needs or has
furnishings (部屋の)家具や備品
goods 商品
groceries 食料雑貨類
guts 内臓、(機械などの)中心部、ガッツ
headquarters 本社
jitters 極度の緊張
leftovers 食べ残し
letters 文学
loggerheads at loggerheadsで「言い争って」、「不和で」
looks 容姿、外見
manners 行儀、作法、(ある時代や社会の)風習
means 手段
nuptials 結婚式
odds 起きる可能性
outskirts 郊外
premises 敷地
proceeds 収益、売上高
proceedings (一連の)出来事
refreshments 軽食
remains 残り物、残骸、遺体
riches (豊富な)富、財産
savings 貯金、預金
series 一続き、連続
shenanigans いたずら、悪ふざけ
smithereens (破壊・爆発によってできた)小さな破片
species (動植物分類上の)種
stairs 階段
suds せっけんの泡
surroundings 周囲
tidings 知らせ、便り
troops 軍隊、部隊
tropics 熱帯地方
valuables 貴重品
works 土木工事