講座受講者へ
毎週月曜日に一週間分(6~9ページ)の暗記ノートを配布します。1日1ページのペースでこなしてください。8ページ以上の週の時は週末に1日2ページ分をこなしてください。暗記ノートは以下のように左側に「英単語」・「品詞」・「意味」、右側に「例文」が載っています。
Eメールを開け、添付されているPDFファイルをプリントアウトしたら、以下の要領で英単語を覚えてください。
プリントアウトした用紙を縦に半分に折り、左側の英単語・品詞・意味が載っている方を表にし、英単語を上から順に声を出して読む。 発音がわからない英単語に印をつけ、ネット辞書で発音を確認する。
用紙を縦に半分に折ったまま、さらに横に半分に折る。そうすると6~8語の英単語を一覧できます。そして右側上半分の例文が載っている方を表にし、役者や声優がセリフを読み上げるように声を出して、下線部に入る英単語を思い出しながら例文を読む。下線部に入る英単語が何か思い出せなかったら、左ページを確認し、もう一度その例文を声に出して読む。1巡したらもう一度最初から英文を読み上げる。
STEP2と同じことをする。
横に半分に折った用紙を元に戻し、右側に載っている例文をすべて声に出して読む。下線に入る英単語をすべて思い出せるようになるまで、繰り返して例文を声に出して読む。
例文を声に出して読んで下線部にはいる英単語をすべて言えたら、終了です。例文全体の意味は大体理解できればオーケーです。英語の例文を通して英単語を覚えるというやり方で英単語を覚えたことがないでしょうから、最初はこのやり方に戸惑うかもしれません。その効果を実感するまでだまされたと思って(だましてませんよ^^)とにかくがんばってこの方式に従って英単語を覚えてください。
私の場合、①~④にかかる時間は10~15分程度です。例文を通してであれば40秒~1分1語のペースで英単語を覚えられます。ただしこれは 「短期記憶」としての暗記です。一度覚えた単語も1日後には5~7割、1カ月後には2割くらいしか覚えていません。「短期記憶」を「長期記憶」に移し替えるためには、1度覚えたものを少し期間をおいて再度暗記作業をして覚え直す必要があります。
私は英単語はお風呂の中で覚えるようにしています。俳優・アニメキャラになったつもりで大きな声を出して英文を朗読してもだれにも邪魔されないし、迷惑もかけません。逆に通勤・通学中の電車や塾の自習室は声に出せないので英単語を覚える場所としては最悪といえます。本講座では「必ず」例文を声に出して読んでください。
英単語暗記で注意すべき5つの鉄則
どれだけ英単語を覚えるべきか
語彙力は英語の基本です。英単語の意味がわからなければ英文を読めないし、英語を聞き取れません。むろん大事なのは語彙力だけではありません。英文法の知識がなければ英文を正しく理解することはできないし、発音がわからなければ英語を正しく聞き取ることはできません。だから正確には、語彙力と英文法の知識と発音の3つが英語の基本と言えます。
日本の英語学習者が特に苦手なのはこのうちの語彙力と発音です。発音についてはまた別の機会で取り上げます。語彙力ですが文章中の2割の英単語の意味がわからないと内容をほとんど理解できなくなります。英文の5%の英単語の意味がわからないと文章を正確に理解できなくなります。
〇〇語覚えれば大丈夫というラインはありませんが、単語暗記にばかり専念するのも時間の無駄です。語彙力はあるに越したことはありませんが一生の間に1・2回しか見ることもない単語を覚えてもしょうがありません。22万人のアメリカ人に調査した結果では、20歳のアメリカ人の平均語彙力は4万2千語だそうです(“An average 20-year-old American knows 42,000 words, depending on how you count them“)。日本人がいくらがんばってもこの数字に達するのは不可能でしょう。
では日本人はどの程度の英語語彙力をつけるべきなのか? 日本の英語学習者にとって一番の目安になるのは大学受験とTOEICに必要な単語数です。学習指導要領ではずっと3千語が必修英単語数でしたが、「教育再生実行会議」の「第7回・議事要旨」には「学校で学ぶ英語の単語数は、中国は 6,150 語、韓国は 8,200 語、台湾は 5,180 語であるのに、日本は 3,080 語。このままだと日本はグローバル時代に勝っていけない。現状の学習指導要領と TOEFL の内容には大きなギャップがある。」 という発言もあり、小学校での英語授業必修化と共に覚えるべき英単語数は一気に増大しました。また、TOEICは600点を取るために必要な語彙数は5千語、700点では8千語、850点以上では1万語以上と言われています。
国公立大学とMARCHより偏差値の高い私立大学を受験する人に対して、わたしは6千語覚えるよう勧めています。なぜ6千語かというと、英単語集として定評の高い「英単語ターゲット」、「システム英単語」、「速読英単語①必修編」、「キクタン【Basic】4000」、「英単語WIZ1900」に収録されている英単語をすべてリストアップして、最低2冊以上の英単語集に収録されている英単語をすべてピックアップしたら、その数が4,800語になり、これらの英単語集に収録されていない超基礎語を加えると、大体6千語になったからです。
6千語というと多くの受験生は多すぎると感じるでしょう。4千語程度の語彙力でも合格は可能かもしれません。ただし確実に大学に受かりたいのであれば6千語程度の語彙力習得を目指すべきです。
どこまで英単語を覚えるべきか
英単語の意味を正確に覚える
英語は使ってなんぼです。単語の意味を覚えてもその単語をスピーキングやライティングで使えなければ宝の持ち腐れです。細かいニュアンスまで意味を正確に覚えないと実際の場では使えません。例えば、disclose, clarify, reveal, elucidate, uncoverはすべて語感が微妙に異なりますが市販の英単語集ではどれも「~を明らかにする」と訳されています。しかし、すべて「~を明らかにする」という意味で覚えるとそれぞれの単語の語感の違いがわからなくなり、使い分けをすることができなくなります。contribute toを「~に貢献する」という意味で覚えると誤解が生まれます。
語法は非常に大事です。例えば、あなたはcompare toとcompare withを使い分けることができますか?
英単語を文脈の中で正確に使えるようにする
英単語の何を覚えるべきかって? そんなの決まっているじゃないか。英単語の意味だよ。utilizeだったら “~を活用する” という意味の動詞だと覚える。 “~を活用する” という意味からutilizeという英単語を思い出せるようになる必要もあるね。そんなのわかりきったことじゃない。何をいまさら。そうそう、utilizeのスペルと発音ももちろん覚えないとだめだよ。
英単語の何を覚えるべきか尋ねたら、こういう返事が返ってきたことがあります。確かにutilizeは「~を活用する」と訳する事ができますが、「~を利用する」とも訳せます。useとutilizeのちがいは、useはそれこそ日本語の「~を使う、利用する」という意味ですが、utilizeは「~を効果的に使う」(use A in an effective way)、つまり使い方が上手であるというニュアンスが加わります。こういう細かい語感の差は「英単語の意味を文脈で理解する」という作業では会得することができます。まずは英英辞典で意味を調べる習慣づけをし、次に文章の中で英単語を覚える癖をつける必要があります。文章の中で英単語を覚えるというのは、キーワードだけ空欄にした文章を読んでその空欄に何の単語が入るか思い出せるようになるということです。
As a physician, I know many doctors want to _______ new technology, but they find the cost prohibitive.
(医師として、私は多くの医師が新しい技術を利用したいと思っていることを知っているが、彼らは費用が法外だと感じている。 )
という文章を朗読して下線部に入る単語はutilizeであることがわかるようになるというのが英単語を文章の中で覚えるということです。下線部はuseでもかまいません。でもそれだと「新しいテクノロジーをただ使っているだけ」というニュアンスにもなります。ここでutilizeという単語を使うことで「新しい技術をうまく使うことで多くの患者を助けることができる」ニュアンスが含まれてきます。こういった単語の細かいニュアンス、つまり語法は文章の中で覚えることでのみ習得することができます。
1日に何語覚えるべきか
毎日10語ずつ覚えていけば、1年で3650語。1年でそれくらい覚えれば十分じゃない?
そうは問屋が卸しません。今日10語覚えても翌日にはその半分以上は忘れてしまいます。ほとんどの人は4回以上覚え直さないと短期記憶が長期記憶に移行しません。5回だと1年間毎日10語覚えても730語しかボキャブラリー力は増えない計算になります。
私の場合は、1日60語以上覚えています。上記のノートで4枚分です。エクセルで英単語帳を作成していますが、新出単語を含む例文を載せているエクセルのシートは1stと名づけ、ノートの例文を声に出して読んで最初から覚えていたら印を入れて、その例文を2ndという名前のシートに移します。2ndシートの例文を朗読して覚えていた単語は3rdシートに移します。1stシートの単語より、1度は覚えていた経験のある2ndシートの単語を覚える方が楽であり、2ndシートより3rdシートの単語を覚える方がさらに楽です。短期記憶が長期記憶に移行するためには何回か繰り返し覚え直さないといけませんが、私の場合は4回覚え直した英単語はかなり期間を置いても継続してその英単語を覚えています(つまり長期記憶に移行しているということ)。2回覚え直した英単語をちゃんと覚えているかどうか1年後に再確認するとほぼ全滅なのですが、4回覚え直した英単語だと5割近くはしっかり覚えているという感じです。「5割ということは半分の英単語は4回覚え直してもまだ長期記憶に移れんのかい!!」と言われそうですが、その半分の英単語も次の5回目ではほぼ確実に覚えられるので、4~5回の繰り返しで覚えた英単語のほとんどを長期記憶に移行できています。
このように私の場合は毎日、1st、2nd, 3rd, 4thのシートを1枚分覚え直しているので計4枚のノートで約60の例文を朗読して英単語を覚え直しています。1枚に当てる時間は10~15分程度なので、毎日1時間くらいは英単語暗記に使っているという換算になります。
復習のタイミングですが、完全に忘れてしまってから復習しようとすると最初からのやり直しと同じことになるので、覚えたての頃は頻繁に復習し、記憶の定着度が高まるにつれ復習を行う間隔を広げていきましょう。私の暗記法だと1stシートに載っている英単語は覚えるまで短期間で何度も繰り返し、3rdシートとなると1年に1回のペースとなります。
どうやって英単語を覚えるか
私は例文を声に出して英単語を覚えています。英単語を書いて覚えることはありません。書いて覚える方法を勧める人が「単語を何度も繰り返し書くことで、手がスペルを覚えていきます。…運動の記憶によって、自然と手が勝手に動くということが可能になるためです。頭と身体の両方で覚えていくという要領です」と書いていましたが、手がスペルを覚えることはありません。例えば、「効率的な」という意味のefficientを頭では思い出せないけど、手は覚えていたのでちゃんと書けたなんてことは絶対ありません。
英単語を音読して覚えましょう。その場合も単語だけでなく例文を朗読して覚えましょう。例えば、「(顔色が)青ざめた、青白い」という意味のpaleですが、「(顔色が)青ざめた、青白い」という日本語訳を見てpaleという英単語を思い出そうとするのではなく、釜爺の
Once Yubaba got control over him, his faced turned pale.
という『千と千尋の神隠し』に出てくるセリフを朗読して、paleという単語を思い出します。ここでhim/hisはハクのことです。湯婆婆がハクをコントロールしたらハクの顔が青ざめたわけです。例文を朗読して英単語を覚える一番のメリットはビジュアル化できることで英単語をイメージで覚えることが可能になることです。ビジュアル化することで記憶に残りやすくなります。
どこでいつ英単語を覚えるか
英単語はスキマ時間に覚えましょう。英語の文章を声に出すという行為は良い気分転換になるので英単語暗記は勉強時間に組み込まず、勉強と勉強の合間にやることをお勧めします。スキマ時間以外にお勧めなのがお風呂に入っている時間と寝る前の時間です。声に出して覚えるということは声を出せない場所では英単語を覚えないということです。つまり、図書館、通勤通学の電車やバス、塾や予備校の自習室では英単語を覚えないでください。黙読だと音読よりもはるかに暗記効率が下がるので声を出せない場所ではほかの勉強をしましょう。
英単語帳の作り方
パソコンを使った英単語帳の作成
英単語と日本語の意味を対にして覚えるのであれば、英単語カードを使って覚えるのが一番効率的です。しかし、例文を使って英単語を覚えるのであればパソコンを使って英単語集を作るべきです。というか、それしか方法はありません。ここでは英単語ノートを作り方を説明します。
英単語ノートに記入すべき項目は
①英単語
②品詞
③意味
④例文
の4つです。
使うソフトはエクセルやGoogle スプレッドシートなどの表計算ソフトです。私は無料のLibreOffice Calcを使っています。A4サイズのノートの配置を横にして左半分に①、②、③、右半分に④を記入します。一番左側のセルに英単語を記入します。その右が品詞です。品詞は日本語でも英語でも構いません。私は英語の略語を記入しています(n., v., adj., adv.など)。その右側に英単語の意味を記入しますが、単語の正しい語感を得るために英英辞典も積極的に使ってください。特に動詞・形容詞・副詞の3品詞は英和辞典では語感をうまくつかめないことが多いです。私が英単語帳を作成する際に使っているネット辞典は以下の8つです。Chromeを起動するたびにこの8つの辞典を開いています。
英辞郎
Weblio
Linguee
Longman Dictionary of Contempoary English
Cambridge Dictionary
Lexico
Merriam-Webster
Your Dictionary
ほとんどの場合、英辞郎・Weblio・Longman・Cambridgeの4つの辞書で間に合います。
一番右側に記入するのは例文です。この方式で一番難儀なのは英単語を覚えるのに適した例文を収集する事です。英文を読んでいてこれは覚えておきたいと思う英単語に出会ったら、その英単語が出てくる文章を自前の英単語集にタイプしましょう。例文はどんな例文でもよいわけではありません。声に出して読んで、下線部に入るべきキーワードを思い出すことのできる例文でないといけません。2つのコツがいります。まず第1に、キーワードは英文のできるだけ後に出てくるようにしないといけません。例えば、「理解する understand」という意味のget itというイディオムを覚える際に使っている『6カ月で英単語・語法・英文法完全マスター』講座での例文は『天空の城ラピュタ』のシータとパズーの以下の会話を使っています。
“To tell you the truth, I don’t want to go to Laputa.”
“You don’t want to go to Laputa? What do you mean? I don’t _____ _____.”
英語版では「本当のことを言うと、私はラピュタに行きたくないの」というシータに対して、「ラピュタに行きたくない?どういうこと?言っていることが理解できない」とパズーは返答します。この文では下線部がラストにきているので文を読みながら下線部に入る語を思い出しやすいです。しかし、下線部が文の初めに来て、
I don’t _______ _______. Why don’t you want to go to Laputa?
だと、後の文章を読まないと下線部に入る単語を思い浮かべることができなくなり、スムーズに英文を読みながらキーワードを思い出すことができなくなります。
もう1つの例文のコツは、ひとつの例文を30ワード以内に抑えることです。あまりにも例文が短いと下線部に入る英単語を思い出しにくくなりますが、かといって文章が長いほど思い出しやすくなるということはありません。例文が長すぎると一つの英単語を覚えるのにかかる時間も長くなり効率的に英単語を覚えることができなくなります。「例文で覚える英単語4800」講座で使用している例文ノートの「自動詞と誤りやすい他動詞」のPDFを載せておきますので、英単語帳を作る際の参考にしてください。