アメリカからきた白人の男性が芸人を目指すと宣言。「本気?」と言うと、ちょっとむっとした表情。
なぜでしょうか?
日本語の「ほんき」とほぼ同じ発音の言葉が英語にあります。honkyという名詞です。honkie, honkeyと書くこともあります。複数形はhonkiesもしくはhonkeysとなります。
なぜむっとくるかというとhonkyは白人に対する蔑称だからです。黒人を侮蔑的にいうときにniggerという言葉が使われますが、白人に対する同様の侮蔑語がhonkyです。クリント・イーストウッドの映画によく出てきます。『グランド・トリノ』(2009)で
You’d better get your ass on honky, while I still let you.
(34:05頃)、『ミリオンダラー・ベイビー』(2005)で
I should’ve known. – We don’t need this honky!
(1:20:06頃)というセリフを確認できます。
honkyについては昨年、日本でも問題になりました。2015年7月25~26日に放送されたフジテレビの『27時間テレビ』で出演者たちがDo HonkyというTシャツを着ていたからです。
「本気になれ」とでも言おうとしたのでしょうか。だったらGet Seriousとでも言うべきです。Do Honkiでは意味が通じません。
honkyは第二次世界大戦が終わった1940年代半ばころから使われ始めましたが、語源が明らかでなく、いろんな説があります。
①中欧と東欧出身(とくにボヘミアとハンガリー)の移民労働者に対する侮蔑語であったbohunkからきており、ウェストバージニア州の炭鉱で、白人、黒人、英語をしゃべれない移民に分け、移民が担当するエリアがHunk Hillと呼ばれたからという説。
②米国南部にあるカントリー・ミュージックを演奏するバーのhonky tonkからきているという説。
③セネガル・ガンジア・モーリタニアにかけて住むウォロフ族の言語であるウォロフ語の xong nopp から来ているという説。xong noppは「耳が赤い人」もしくは「白人」を意味します。
④「車のクラクション」を意味するhonkからきているという説。1920年代に黒人の売春婦を求める白人男性がクラクションを鳴らして売春婦を呼び込んだそうです。
どの説が正しいかは判明していません。もしかしたらほかの理由からかもしれません。
honkyという単語が広まったのは、1967年に学生非暴力調整委員会(Student Nonviolent Coordinating Committee)がniggerの対立語としてhonkyを使い始めたからだと言われています。
キング・コングも白くなるとHonkey Kongになります。
アメリカのPBS(寄付金で運営している公共放送番組)でHonkyという番組が放映されています。テーマは現代アメリカのレイシズムについてです。