動詞には自動詞と他動詞があり、他動詞は必ず目的語をとります。例えば、日本語では「俺、好きなんだよね。」と言えますが、英語では「好きである」という意味のlikeは他動詞なので、必ず I like you. のように目的語をとり、何が好きなのか言わなければいけません。この英語の目的語の多くは日本語では「~を」と訳されます。例えばvisitは他動詞なので I visited New York. は「私はニューヨークを訪問した。」と訳されます。それに対し、自動詞のgoを使って I went to New York. とすると、「私はニューヨークに行った。」と訳されます。
動詞の前が「~を」だと他動詞、「~に」、「~と」、「~について」、「~から」だと自動詞と考えがちです。ほとんどの場合はその推測が正しいのですが、他動詞なのに日本語では「~に」、「~と」、「~について」、「~から」と訳される場合も少数ながらあります。その場合は「~に」にto、「~と」にwith、「~について」にabout、「~から」にfromという前置詞を動詞の後につけがちですが、他動詞の後は前置詞ではなく名詞もしくは名詞相当語句がくるので間違いです。
自動詞と誤りやすい他動詞は問題にしやすいのでよく試験に出てきます。英文法書でも詳しく説明していないことが多いので、今回、ジブリ映画にも出てくる11つの「自動詞っぽいけど自動詞ではない他動詞」をしっかりマスターしましょう。
touch ~に触る
『もののけ姫』の最初の場面でアシタカは傷を負います。
アシタカ「かや、触れるな。ただの傷ではない。」
男の声「アシタカが手傷を負った。」
「ただの傷ではない」が「この傷は邪悪だ」と英訳されています。
“Kaya, don’t touch it. This wound is evil.” “The prince has been hurt.”
「触る」という意味のtouchは他動詞なので、英語で表現するときは「何に触るか」明確にする必要があります。そして 「~に触る」はtouch toではありません。 「彼女のお尻を触った」はI touched her butt. となります。
obey ~に従う
道路上を飛んで職務質問されるキキ。「でも私は魔女です。魔女は飛ぶものです」と言い訳しますが、交通警察官に「魔女でも交通規則は守らなければいかん」と怒鳴られます。
“But I’m a new witch, sir. We’re supposed to fly around.”
“You’re supposed to obey the law.”
witchは『魔女』、be supposed toは「~することになっている」、fly aroundは「飛び回る」という意味です。 「~に」だからといってobey to the lawと言わないように気をつけましょう。obeyは他動詞なので必ず次に名詞もしくは代名詞などの名詞相当語句が来ます。
discuss ~について話し合う、議論する
『耳をすませば』で 雫が高校受験をしないと言い出した場面です。 姉の汐が 「だって、お父さん、雫ったらひどいのよ。」と言うと、 父親の靖也が「うん… 二人とも、こっちに来てワケを話してごらん。」と返答します。
“But Dad, she’s gonna ruin her life if she keeps this up.”
“All right. Let’s go to the kitchen and discuss this.”
ruinは「~をダメにする」、keep A upは「Aをし続ける」、go to the kitchenは「台所に行く」。台所というのは各家庭に一つしかなく、家族みんなが台所といえばどの台所か理解を共有しているので、go to a kitchenとは言いません。go to a kitchenだとkitchenがいくつもあって、そのうちのいずれかのkitchenに行くという不自然な意味になります。
「~について議論する」という意味のdiscussをdiscuss aboutと書く人は非常に多いです。しかしdiscussは他動詞なので次に来るのは前置詞ではなく目的語です。
marry ~と結婚する
『紅の豚』でジーナがポルコに「私を見るなり“結婚してくれ”だって」と言っています。ジーナにそう言った男はアメリカ人のカーチスです。
As soon as he saw me, he asked me to marry him.
他動詞を自動詞と間違えがちな定番動詞がdiscussとmarryです。「~と結婚する」はmarry withではないですからね!!
follow ~について行く
ポルコが秘密警察に尾行されている場面です。フィオにこう言います。「そこの窓から後ろを見てみな。ファシストの秘密警察だ。フィオをつけていたのさ。」
I want you to take a good look behind us, will you? That’s the Fascist Secret Police. They’re following us.
take a lookは「見る、見てみる」、goodが加わることで「よく見る」という意味になります。 I want you to…は命令文ではないですが、その後のwill you?は『実践ロイヤル英文法』pp.25-26の8C(2)③で説明されている「命令文に続く付加疑問」と用法が同じです。秘密警察がつけていたのはフィオだけなのに英語版ではus (フィオとポルコ)に変わっています。 「~についていく」をfollow toと言わないように注意して下さい。
join ~に参加する
『風の谷のナウシカ』でのクシャナのセリフです。
Follow us, and join our enterprise. We shall put the toxic jungle to the torch and resurrect this land together.
enterpriseは「企て」、put A to the torchは「Aに火をつける」、toxic jungleは直訳すると「有毒のジャングル」ですが、英語版ナウシカでは「腐海」をtoxic jungleと訳しています。resurrectは「~を復活させる、復興させる」という意味です。shallは話し手の意志を表わしています[42A(1)]。followは「~についていく」、joinは「~に参加する」という意味の他動詞です。 「~に」だからといって、follow to, join toとは言わないように気をつけましょう。
resemble ~に似ている
Even if it resembles someone, it’s probably just a coincidence.
『涼宮ハルヒの溜息』でSOS団が映画を自主作成し、それを文化祭で上映するエピソードがあります。上のセリフは映画の最後に出てくるテロップです。 even ifは「たとえ~であっても」 、resembleは「~に似ている」。probablyは「おそらく」という意味で覚えている人が多いですが、日本語の「おそらく」よりもはるかに起きる確率が高く、「十中八九」で起きそうなことをprobablyと言います。coincidenceは「偶然の一致」という意味です。resembleは他動詞なのでresemble toと言わないように気をつけてください。
contact ~と連絡を取る
『となりのトトロ』での場面です。カンタが預かった電報をサツキに手渡します。それを見たサツキ。「七国山病院! お母さんの病院からだわ。お母さんに何かあったんだ。おばあちゃん、どうしよう! 連絡しろって。」
“Please contact Shichikokuyama.” Shichikokuyama! It’s from Mom’s hospital! Something must have happened to her. We have to get to the hospital right away, Granny.
happen to Aは「Aに起こる」、get to Aは「Aに連絡を取る」、right awayは「すぐに」という意味です。 「must have+過去分詞」は現在完了で「~したにちがいない」。「Aと連絡を取る」をcontact with Aと書く人が多いですが間違いです。名詞のcontactにはin contact with (「~と連絡を取り合って」)のようにwithが後に来ることがあるので、つい動詞の時にも後にwithをつけてしまう人が非常に多いです。特に気をつけておきたい動詞です。
answer ~に答える
『天空の城ラピュタ』でのシータのセリフです。日本語版では「パズー!」と叫ぶだけの場面で英語版では「大丈夫?私に返事して」というセリフが加えられています。
“Pazu! Are you all right? Answer me!”
「~に答える」はanswer toではなくてanswerとなります。
reach ~にたどりつく
パン屋に来た赤ちゃん連れの女性が赤ちゃんのおしゃぶりを忘れて帰ってしまいました。通りがかったキキがオソノに「あの… 私でよければ届けましょうか?あそこを曲がった乳母車の人でしょう?」と話しかけます。
Excuse me. But would you like me to deliver it for you? The woman with the baby carriage who just went around the corner. I could reach her in no time.
Would you like me to do?は「私が~しましょうか?」。deliverは「~を配達する、届ける」。baby carriageは「乳母車」。just went around the cornerは「ちょうど角を曲がった」、in no timeはimmediatelyという意味です。「~に到着する」「~に達する」などの意味のreachは他動詞なのでreach toと言わないように気をつけてください。
leave ~から去る
ラジオの天気予報で今夜は満月の晴れと聞いて、キキは旅立ちの日を今夜と決めます。「ドーラさん、こんにちは。あたし決めたの。今夜にするわね。」 深夜12時をmidnightと言います。
Please excuse me, Miss Dora. Mom, it’s a perfect midnight for me to leave home.
ここでのhomeは名詞の「家」を意味します。「家から去る」、「家を離れる」、「家を出る」はleave homeになります。leaveは自動詞で「(今いる場所から)去る」という意味がありますが、leave from homeとは言わないので注意してください。